猥褻風俗史

全一冊（非売品）

明治四十四年四月発行　和紙和装半紙本

これは当時「筆禍史」（二千部印刷）と「本邦新聞史」（五百部印刷）の二種を発行したので、此両書を併せて購求させる策として、何か景品を附けやうと考へ出し、それでは世俗の助倍根性に乗じたものをとの思立で、俄かに大急ぎで着手し、僅か二日間で書きあげたものである、其内容は 自序、総説、紳体（引証記事十数項）、歌謠、刊本、観物、雑記、結論、自跋

に分けて略記した全篇タツタ三十頁のものであつたが、商策其図に当って、五百人の両書注文者があつた、それで、「本邦新聞史」は残本なく売り尽したのである

それから。近頃の「半狂堂出版図書目録」に記してある通り「爾来希望者頻々たりしも、悉く拒絶して応ぜず、又再版もせざりしなるが、偶ま古本の市に出るあれば、二円三円に売買し、いつぞや文科大学の講義に引用されしとて倍々希望者多く、大正九年頃は五円六円七円に騰貴しそれにても手に入ること能はざる人々は、著者に借本を申込み来りて全文を謄写し、又それによりて転々複写の労を惜まざる人々も少からずと聞けり、再版は珍重の度を滅ぜしむとの反対説ありしも、先年「売春婦異名集」の発行当時、収支不償にて事業の継続困難なりしがため、同時に既刊書六円以上購読する人々に無料添附する事に定めて再版せしが、其餌に釣られし大方の諸君子方も少からぬと見え、三版四版を重ぬる事となり、所謂商略図にあたりしを喜び、今尚其無料添附を継続し、何書にても定価六円以上の註文者にて特に希望する人々に限りて無料添附し居れり」

で、大正十年以来、増刷又増刷で第四版を重ねるに至つて居る、営業の点から云へば、本書は半狂堂の福神様である