コンテンツにスキップ

伝説

土俗俗学に対して伝説学あり、我国の口碑に伝はりし説話にも本書の資料少しとせず、神話は即ち伝説なり、みとのまばひ、交接教鳥(とつぎをしへとり)等は伝説にして神話なり、先年伝説研究学者として著名なる藤沢術彦先生、予が開きし本郷赤門倶楽部に於ける門外講座に出席されて「猥褻と伝説」を講演され「チウチウ蛸かいな」は猥褻の伝説に基因すなど、爾余数多の講話ありたり

「七難がそゝ毛」といふ大明神の正体もあり得べからざる妄誕の伝説に過ぎざるべし、台湾人の祖先は紅頭峡に渡りて粟の種を盗み取り、陰茎の包皮に其種を隠し、追ひ来る人の捕を遁れ、海を泳ぎて帰り来り、初めて台湾に粟の播種を得たるなりとの伝説あること「人類学雑誌」に見ゆ

小学児童に知られし桃太郎は桃から生れ

玉手箱を貰ひし浦島は龍宮の乙媛と契りし者

是等は適例にあらずとするも、久米の仙人が女の白脛を見て通力を失ひ、空より堕落せりと云ふこと、肉体美は肉欲を挑発するの実を語るもの、三国を跨にかけし玉藻前は、人獣相姦の例を示せるものにあらずや