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骨相

泰西学術の中には、フレノロジイ、パルミストリー、近くは人格解剖学といへるもありて、学術的に骨相手相等を説けるもあれど、こゝには我国の骨相学書に就て云はん

元来は漢訳にて科学的のものにあらず、伝統的愚説多きが如し、寛政十一年の刊本「相学弁妄」、安政三年の刊本「人相独稽古」等には、男女の陰相二十四条を挙げて、男根の大小長短、陰戸の広狭高低、陰毛の多少、睾丸の大小等につきて、其人に吉凶禍福の相違あることを説けり「書ニ曰穀逍乱毛号作陰抄ト、故ニ糞門ノ辺ニ毛ノ沢山ナルハ男女トモニ皆多淫ナリ、賢命ノ穴落入リ或ハ皮枯レ潤ナキ者ハ不遠ニシテ死ストイフ」など、帰納法的なるが如しといへども、モト無稽の荒唐説なるべし

然れども、是等の所説中には、科学的に解釈し得ることも無きにあらず、彼は単だ伝統的の記述に過ぎずとするも、これを後の生物学的生理学的に研究して見れば、往々学理学説に合致せる事もあるなり。伝聞の俗説に「頬赤は臭気強し」といふなども、これを今日の生理学的に釈明し得る其一例たり

又眠尻の下りたるは好色の相なりとか、口の広狭、髪の伸縮は生殖器に関係ありとする俗説の是非は知らざれども、鼻と生殖器との関係は、生理学、鼻学、病理学に於ても説く所なり