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有職

大槻文彦先生の「言海」に「有職とは有識の誤にて元はモノシリ、学者の意なり、故実の例式など明らむる学」とあり「職」は「識」の誤とするも、こゝには慣用の例に倣ひて有職学と記す、其有職学者として著名なる伊勢貞丈の著「安斉随筆」には「鰹破前(はぜ)、蚫苦本(くぼ)」の「はぜ」は男陰、「くぼ」は女陰の古名、「かはつるみ」は独淫の事なりなど古淫語の解説を出し、「貞丈雑記」には

「陰茎をま×と云ふは近世の俗語にはあらず、古代よりの名なり、古今著聞集、古事談、宇治拾遺等の古き書にま×とあり、源順が和名抄、茎垂類の部に玉茎の二字を出だして和名をば出ださず、牛馬体の条に陰豚の二字を出だして、俗にいふ麻羅佐屋とあり、然れば順の時代もま×と云ひしなり、又今の世にま×の事をへ×こと云ふは非なり、和名抄には陰嚢の二字を俗に布久利(ふぐり)と記し、陰核の二字をば俗に篇乃古と記したり、陰核は今の世に云ふきんたまの中のくりくりなり、其くりくりを古はへ×こと云ひしなり、然れはま×の事をへ×こと云ふは称へ違ひなり、これらの名にも古実あり、何事も古今違ひの事多し、……」以下其出典を記せり、長文ゆへに略す(明治三十三年発行、今泉定介先生校訂本に拠る)

鎌倉時代に、男禁制の奥殿にて用ゐし宿物袋(とのゐふくろ)の中に男を隠し置き、御殿女中が交代に歓楽を遂ぐる図三面、有職学上の珍本「◯◯(たくのう)輻湊」に見ゆ、其隠し男を袋法師と呼べり

犬張子といへる物は、婚儀に必須の品とせる嫁入道具の一なるが、其用は枕頭に置きて棄紙を入るゝを例とせしなりと有職学者語れり