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薬剤

支那の久戦丹、如意丹、蘭凌香等に擬せし日本の長命丸、女悦丸、唐線香等の類は十数種あり、又我国特製の「たけり丸」和蘭陀伝法といへる「羅煉香」など淫薬は枚挙に遑なし、其原料は刺戟性の興奮剤にて、多くは丁子、胡椒、肉柱、麝香等を用ゆるが如し

「朝鮮風俗集」中、朝鮮人の犯罪としての記事中に

「迷信に基くものは癩病及肺病人の重症者が、小児の陰茎を食ふときは全快すると信じ、欺いて小児を連れ行き兇行を敢てするもので、刑典にも明文がある、これを見れば古よりあつたらしい」

支那にては、女の経水(汚血)を乾燥せしめて「紅粉」と称しこれを薬剤とせり

大正六年一月発行の「薬石新報」に、法学博士市村光恵先生の談として「南洋の惚れ薬」と題し、獣類の蔵腑等にて製せし爪哇特有の媚薬ある事を記せり

大正十一年八月発行の「医学及医政」所載、長谷川兼太郎子「竹椽薬談」中に左の一節見ゆ

「支那も南方、殊に広東地方の奥地へ入ると、厳山が沢山に在って、それには天然の洞窟がいくつもあいて居る。入口近くは薄明るいが、奥は全く暗黒で、其深いのに成ると数丁に瓦るのさへある、洞窟内には種々の怪鳥が棲息して居るが、最も有名なのは蝙蝠である、これは可成りに古くから知られて居て、広東新語によると、此処の蝙蝠は、春秋の間は窟内の乳石の精汁を以て餌とし、夏は外に出て野生の霊枝を食するも、冬は只気を服するのみ(冬眠)、其翼は鼠色を呈し、体赤きは百年を経しもの体色純白にして、其形鵲大のものは千年を経しもの、又頭都に鶏冠あるものは最も古きものなり、然而其体中の陽精悉く脳に集中し居るがため、頭重く、常に逆さに下りをるはれが故なり、夏期は多く紅蕪花の枝に棲み、雌雄の仲真に睦まじく、決して箇々に居る事なし、雌雄いづれかを捕ふる時は、他は之を慕ひて傍らを離れず、容易に捕獲し得らる、其肉は増血剤として多大の効あり其毛は婦人病によく、又これを黒焼として意中の人に服さしむれば其恋忽ちに達す、之を媚薬といふ……とある即ち惚れ薬なのです。日本では昔から蝶頭の黒焼にしたのを男女惚れ合ひ薬として俗聞に識られて居るが、蝙蝠も又同様の効能ある事はお気に附きますまい」